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Brobdingnagian Glass: 振動曲面鏡を用いた小人化両眼立体視システム

要旨

本システムは,両眼立体視によって小人の世界を体験するシステムです.本システムによって,ユーザーは実スケールの38分の1,身長5cmほどの人間の世界を体験することができます.

解説

人間のスケール感覚は自身の身体寸法を基準にして生み出されるといわれており,仮想的に身体の大きさを変えてやることで,そのスケールに応じた世界観を実現することができると考えられます.

特に視覚については,スケール感覚の基準となる,つまり両眼立体視を行うために欠かせない寸法として以下の3つがあげられます(図1).


  • 眼間距離(IPD):右目と左目の間の距離.
  • 明視距離(LDDV):ピントを合わせることのできる最も近い距離.
  • 目の高さ(EL)


人間が正しく両眼立体視を行うためにはこれらのパラメタを適切にスケーリングする必要がありますが,2台のカメラを両眼として扱う既存手法では,カメラに物理的な大きさがあるために, 眼間距離や明視距離に下限が存在してしまいます.

そこで,我々は球面鏡を振動させることでこの問題を解決しています.システムは以下の順に動作します(図2).


  1. 鏡を振動させる
  2. 鏡が左に移動したタイミングで左目の画像を取得する
  3. 鏡が右に移動したタイミングで右目の画像を取得する
  4. CG空間に画像を張り付けて歪みを補正する
  5. ヘッドマウントディスプレイに投影する
  6. 以上を繰り返す


観察する物体はステージに載せられるように設計されています.ステージの様子と,そこからヘッドマウントディスプレイに投影される映像は図3のようになります.


本システムによって,ユーザーは実スケールの38分の1,身長5cmほどの人間の世界を体験することができます. 現状のシステムでは眼間距離を1.72mmに設定していますが,眼間距離は鏡の振幅によって決まるため,振動に用いているデバイスの性能次第で眼間距離は事実上無限に小さくすることができます.


図1 両眼立体視に重要なパラメタ
図2 システムの動作フロー
図3 (a) ステージの様子. (b)HMDの左目,(c)右目に投影された映像.
このスケールでは,ユーザーは捕食者であり被食者である.

動画




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参考文献

  1. 伊藤遼,宮下令央,石川正俊: 小人が見る世界を体験する両眼立体視システム, 信学技報, vol. 119, no. 222, MVE2019-23, pp. 1-4, 2019年10月10日.
  2. Ryo Ito, Leo Miyashita, and Masatoshi Ishikawa: Brobdingnagian Glass: A Micro-Stereoscopic Telexistence System, SIGGRAPH Asia 2019 Emerging Technologies. (Brisbane, QLD, Australia, 2019.11.17-20, 2019)

東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 / 東京大学 情報基盤センター データ科学研究部門 石川グループ研究室
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