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高速動作可能な明瞳孔人工眼球
概要
視線から人間の行動や状態を把握するアイトラッカーは様々な場面で利用されるが, アイトラッカーの正確度や精密度を評価する際に人間だけでなく眼球模型も重要な役割を果たす. 一般にアイトラッカーは近赤外光とカメラを用いて眼球を計測するが, カメラの光軸に近赤外光源が近い場合は明瞳孔,遠い場合は暗瞳孔として観察され, 眼球模型では暗瞳孔が採用されることが多い. また,眼球運動の一種であるマイクロサッカードは神経生理学的・心理物理学的な発見につながることが期待されているが, 極めて小さく素早い動きであるマイクロサッカードの計測にはあご台による頭部固定の必要性がある. 頭部が動く自由な状況でのマイクロサッカードの検出のための計測装置や検出アルゴリズムの開発には, 素早いマイクロサッカードを再現可能な眼球模型の開発が必要である.
そこで本研究では,マイクロサッカードのような高速動作を可能とする明瞳孔を備えた眼球模型を提案する(図1). 角膜反射を模した平凸レンズに砂面加工を施し,裏に再帰性反射材を配置することで, 明瞳孔を再現しつつ,高速動作のための軽量性を維持した光学設計をもつ(図2, 3). ガルバノモータが小型眼球模型を回転し,マイクロサッカードのような高速動作を再現する(図4). 明瞳孔の特徴は頭部移動への高速トラッキングを容易にし, モータによる定量的な微小回転を再現することで, 自由な頭部移動を許容する眼球微動計測システム の開発に繋がり, 医療・ライフサイエンス分野などへの応用展開の促進が期待される.
なお,本内容は日本電気株式会社との共同研究の成果に基づくものである.
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参考文献
- Tomohiro Sueishi, Soichiro Matsumura, Shoji Yachida, and Masatoshi Ishikawa: Optical and Control Design of Bright-Pupil Microsaccadic Artificial Eye, 2022 IEEE/SICE International Symposium on System Integration (SII2022) (Online, 2022.1.11)/Proceedings, pp.760-765
- 末石智大,松村蒼一郎,谷内田尚司,石川正俊: マイクロサッカード高精度計測に向けた動的な明瞳孔眼球模型の開発, 第22回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会 (SI2021) (オンライン,2021.12.16)/講演会論文集, pp.2011-2016