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曲率フローに基づく閉曲線ブレンディング

概要

シェープブレンディング(シェープモーフィング) とは,閉曲線やソリッドモデル間の遷移を連続的に表現する手法であり,コンピュータグラフィックスにおいて活発に研究されている.とりわけ対象を閉曲線に限定した問題を閉曲線ブレンディングと呼び,アニメーションの生成等の様々なアプリケーションに用いられている.閉曲線ブレンディングは,一般に頂点対応問題と頂点パス問題の2つのサブ問題に分解して解かれる.本研究では特に後者の頂点パス問題,すなわち与えられた頂点対応を元に指定された頂点対がどのようなパスをたどるかを計算する手法を提案する.

閉曲線ブレンディング手法は,いくつかの性質を満たしていることが望ましい.アニメーション生成においては,計算したブレンディング曲線が自然に遷移しているように見えることが重要である.またアニメータ支援の観点からは,アニメータがインタラクティブに編集できるようブレンディング曲線をできるだけ短時間で計算できることが望ましい.

本研究では,曲率等の幾何量が定義された多様体上の幾何フローの一種である曲率フローを用いて,上記の性質を持つ閉曲線ブレンディング手法を提案する. これまでも形状フェアリング等のジオメトリ処理に応用されてきたものであるが,本研究ではシェープブレンディングにも応用できる点に着目する.また,曲率フローをデザインすることにより,関連手法では困難であった様々な性質を持たせることが可能となる.

下に示すFig. 1とFig. 2は,それぞれ一番左と一番右にある閉曲線を入力として,提案手法によってブレンディングした結果を間に並べたものである.Fig. 1は,閉曲線対の回転数*1が同じ場合に提案手法を適用した結果であり,Fig. 2は回転数が異なる場合に適用した結果である.特にFig. 2では,曲率フローとして曲率拡散フローを組み込むことで,回転数が異なり尖点*2が生じる場合であっても,尖点が生じる瞬間を除いて滑らかなブレンディングを生成することが可能であることを示した.また,関連手法よりも2桁以上高速に,かつ数値的に安定なブレンディングを計算することが可能であることを確認した.

*1: 閉曲線の全曲率を2πで割った整数値で,閉曲線を特徴付けることができる
 *2: その点における外角がπとなる点



参考文献

  • 平野正浩,渡辺義浩,石川正俊: 曲率フローに基づく閉曲線ブレンディング, 情報処理学会論文誌ジャーナル, Vol.58, No.7, 2017. [http://id.nii.ac.jp/1001/00182656/]
  • Masahiro Hirano, Yoshihiro Watanabe, Masatoshi Ishikawa: Rapid blending of closed curves based on curvature flow, Computer Aided Geometric Design (Special issue on GMP2017), Vol.52-53, pp.217-230, 2017. [doi: http://dx.doi.org/10.1016/j.cagd.2017.03.005]
  • Masahiro Hirano, Yoshihiro Watanabe, Masatoshi Ishikawa: Rapid blending of closed curves based on curvature flow, International Conference on Geometric Modeling and Processing (GMP2017), (Xiamen, China, 2017.4.19)/Proceedings (2017)
  • Masahiro Hirano, Yoshihiro Watanabe, Masatoshi Ishikawa: Closed curve blending based on curvature flow, The Symposium on Solid & Physical Modeling 2016 (SPM2016), (Berlin, Germany, 2016.6.21)/Abstracts (2016)
  • 平野正浩,渡辺義浩,石川正俊: 曲率フローに基づく閉曲線ブレンディング 第161回 情報処理学会 グラフィックスとCAD研究会 (神戸, 2015.11.7)/講演会論文集, 2015-CG-161(28), pp.1-8 (2015)
 
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