人間と微生物との実世界インタラクション
概要
近年の計算機科学の発展は遠隔地や仮想空間内の相手との自在なインタラクションを可能にしたが, 異なるスケールの世界にいる存在とのインタラクションは未だに困難である. 特にマイクロ・バイオ分野の発展によりマイクロ世界とのインタラクションの必要性が高まっているにも関わらず, マイクロ世界とのインタフェースは未だ顕微鏡のレンズをのぞき込むことが主流であり, ユーザビリティは著しく低い.
そこで本研究ではこのスケールの壁を取り払い, マイクロ世界とマクロ世界をつなぐ新しいインタフェースを提案したい. ここではその第一歩として, 微生物との物理的な触れ合いを等価的に体験できるインタラクションシステムを提案し, まるでペットと遊ぶように微生物と触れ合えるシステムを実現する.
本研究では実世界志向の直観的な触れ合いを重視し, 微生物の運動や状態をマクロ世界で体現するアバタロボットを介して, 微生物と人間がインタラクションを行う.微生物の位置や姿勢, 速度等は 微生物トラッキング顕微鏡 によってリアルタイムで計測・処理され,アバタロボットに伝えられる. これにより,ロボットはまるで微生物が乗り移ったかのように動く. また微生物が非常に元気な時はロボットの LED が光るなどの演出も考えられる. 逆にユーザがロボットに近付いた,触れたなどの情報はロボットに装着された各種センサで検知され, 電気走性アクチュエーション などの手段によって微生物にアクションがかかる. こうして双方向のインタラクションループが形成され,一種のリアルタイムなコミュニケーションが微生物とユーザとの間で成立する. あいだにイーサネットを介することで,さらに場所の壁も超えた遠隔コミュニケーションも可能になる.
エンターテインメント,教育・学習,アート・インスタレーションなどへの展開が期待される.
参考文献
- 尾川順子,長谷川健史,奥寛雅,石川正俊:
微生物との実世界インタラクションに向けたインタフェース用アバタロボットの制御,インタラクション 2008 (東京,2008.3.3)/論文集,0077
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