masterhead masterhead  masterhead

大口径可変焦点レンズによる屈折力調節可能な老眼鏡

概要

老眼はよくある目の疾患であり,40歳を越えると目の不調を訴え始める人が多い.この目の不調は近くで本や新聞を読む際に顕著であり,鮮明に見るために以前より本等を遠ざける必要がある.レストランでのメニューが,特に薄暗い照明下ではかすんで見えたりしてしまう.近傍の対象に鮮明に焦点を合わせられなくなるのが老眼と呼ばれ,加齢と共に生じる水晶体弾性の低下と毛様筋の筋力低下が原因と推定されている.

老眼は近視や遠視とは異なる.近視や遠視は矯正眼鏡を用いて決まった屈折力の単純な増減により矯正できるが,老眼は水晶体の弾性が失われることで目の調節力が低下してしまうため,決まった屈折力のレンズでは老眼を矯正することはできない.

人口の高齢化は平均余命の増加と出生率の低下による現象であるが,中国と日本は次の10年で高齢化社会となりアンバランスな人口増加に直面するという調査もあり,老眼の発病により多くの人が老眼に苦しむこととなる.さらに世界的に老眼の流行は,2020年までに77億人中14億人,2050年までに96億人中18億人まで広がると予想されている.結果として日常の主要な作業をこなすのも制限されてしまうこととなる.3億8600万人,94パーセントもの多くの人が発展途上世界で生きており,多くの人が眼鏡を持たないことで適切に働いたり読むことができず,彼らの日常生活に多大な影響を与えている.

我々は単一レンズ全体にわたって均一な光学力をもつ,屈折力調節可能な眼鏡を提案する.眼鏡の右側面に取り付けた小型の回転球を介して装着者が屈折力を調整することができ,回転方向によって屈折力の正負を素早く段階的に設定できる.実験により老眼鏡として動的な矯正が可能なことを示した.

図1は老眼を矯正する屈折力調整可能な可変焦点レンズであり、装着者はインタラクティブに屈折力を調整することで遠近両方の対象を鮮明に観察できる. 図2は実験装置であり、眼鏡から異なる距離(近:0.3m,中:1.0m,遠:3.5m)に3つの物体を設置した.触ることのできる回転球のインターフェースにより眼鏡を調節し,出力がPCのシリアルポートを介して接続されたマイコンに転送される.PCはその信号を処理し,高精度なシリンジポンプを駆動するコントローラに命令を送る. 図3は実験結果であるが、動画から3枚のスナップショットである.

AdaptiveEyeglasses_concept AdaptiveEyeglasses_experimental_setup
図1 老眼を矯正する屈折力調整可能な可変焦点レンズの概念図. 図2 実験装置のセットアップ.眼鏡から近中遠の距離に物体を設置した.
AdaptiveEyeglasses_experimental_result
図3 実験結果(動画から3枚のスナップショット).

参考文献

  1. Lihui Wang, Alvaro Cassinelli, Hiromasa Oku, Masatoshi Ishikawa, A pair of diopter adjustable eyeglasses for presbyopia vision correction, SPIE Optics + Photonics 2014 (San Diego, California, USA, 2014.08.18) / Proc. of SPIE, Vol.9193, 91931G-1(Poster Session)[PDF(0.5M)][Poster(0.4M)][DOI:10.1117/12.2061659]
  2. Lihui Wang, Hiromasa Oku, Masatoshi Ishikawa, An improved low-optical-power variable focus lens with a large aperture, Optics Express, Vol.22, Issue 16, pp. 19448-19456 (2014)[PDF(2.2M)][DOI:10.1364/OE.22.019448]
  3. Lihui Wang, Hiromasa Oku, Masatoshi Ishikawa, Variable-focus lens with 30 mm optical aperture based on liquid--membrane--liquid structure, Applied Physics Letters, Vol.102, 131111 (2013)[PDF(1.1M)][DOI:10.1063/1.4800603]*AIP

    *AIP © 2013 American Institute of Physics. This article may be downloaded for personal use only. Any other use requires prior permission of the author and the American Institute of Physics. The article appeared in L. Wang et al.,Appl. Phys. Lett. 102, 131111 (2013) and may be found at http://link.aip.org/link/?APL/102/131111.


東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 石川グループ研究室
Ishikawa Group Laboratory WWW admin: contact
Copyright © 2008 Ishikawa Group Laboratory. All rights reserved.
logo